犬の歯が折れることは意外と多く、飼い犬の27%に歯の破折(折れたり欠けたりすること)があると報告されています。
また、10%に露髄(歯髄が露出していること)が認められるといわれています。
そのまま放置すると歯髄炎や根尖膿瘍を引き起こすこともあります。
犬のために良かれと思って与えたガムやおもちゃが破折の原因になることがあるので、正しい知識を身につけて破折を予防し、もし破折を見つけた場合にはすぐに対処できるようにしましょう。
犬の歯が折れる原因とは
硬い物をかじったため
破折の原因のほとんど(90%以上)が硬い物を噛んだことによるものといわれています。
ひずめ、骨、硬いガム、硬いプラスチック製のおもちゃ、ケージ、石などをワンちゃんがかじったことによって歯が破折します。
歯の中で最も硬いエナメル質(一番外側の部分)の厚みが、人は1~3mmに対して犬は0.2~0.5mmしかありません。人の約1/5の厚みです。したがって、思ったより簡単に歯が欠けてしまいます。
飼い主様は、歯石を予防するには硬い物を与えたほうが良い、という認識を変えなければいけません。
また、ペットショップに売っているものだから安心ということもありません。
事故
高い場所から落下したり、激しく遊ぶ中で転倒したり壁に衝突したりするなどして歯をぶつけて破折することがあります。
歯周病や虫歯
歯周病やエナメル質形成不全といった病気によって歯が脆くなると、ちょっとした力でも歯が欠けてしまうことがあります。
3歳以上の80%が歯周病といわれています。
犬の歯が折れた時の対処法
まず、歯が折れているかどうかに気づくことが大事です。
普段から口を開ける練習をして歯を観察することは、早期発見につながります。
しかし、ほとんどの場合は破折に伴う症状によって気づくので、症状を覚えておきましょう。
「欠けた歯を見つけた」「口から出血をしている」「口を触られるのを嫌がる」「歯磨きを嫌がる」「片側の歯でしか噛まなくなった」「目の下が腫れている」などの症状です。
このような症状を見つけたら、以下の対処法にしたがってください。
欠けた歯の確認と保存
口の中に欠けた歯があるかどうかを確認します。
上顎の第四前臼歯という大きな歯が最も破折しやすく、次に上顎の犬歯が破折しやすいので、まずこの2つの歯を確認しましょう。
上顎の第四前臼歯は、平板破折といって薄い板状に歯が欠けるので見逃さないようにしてください。
欠けた歯が見つかった場合は、清潔な布や入れ物に入れて動物病院に持参します。
ただ、痛みなどから口を触ると怒る犬もいるので注意して行ってください。
口腔内の清潔の保持
歯が欠けた場合、口の中に傷があるかもしれません。
清潔を保つために、ぬるま湯で口腔内を洗浄すると良いでしょう。
動物病院への受診
歯の破折が確認できた場合や疑わしい場合は、できるだけ早く動物病院を受診し獣医師に相談しましょう。
露髄が生じている場合、24時間以内に歯髄炎が起こる可能性があります。
露髄は、血管や神経などが含まれる歯髄が露出している状態です。
肉眼的には、ピンク色や黒色の組織として見えます。
露出した歯髄は細菌によって炎症が起こり、最終的には壊死します。
治療としては、歯髄を除去し詰め物や被せ物で治療をする歯内治療か抜歯をするか、どちらかの選択になります。
歯内治療を選択する場合、治療を行える動物病院は少ないので事前に調べるか紹介をしてもらうことになります。
折れるのを予防する方法とは
硬い物を噛ませない
犬にガムやおもちゃを与える場合、硬い物は避けて、ある程度弾力のあるガムや布製・木製などの丈夫で安全なおもちゃを使用しましょう。
一度破折をした犬は要注意
約40%の犬で複数回の破折が認められます。
一度破折をした犬は繰り返すことが多いので、より注意をして再発防止に努めてください。
定期的なデンタルケア
歯周病などで歯が脆くなると、破折のリスクが高まります。
おうちでの歯磨きや、動物病院でスケーリングを行うことで歯周病を予防しましょう。
十分な運動やストレスのない生活
運動不足やストレスによって、物を噛むという行為に執着する場合があります。
硬い物を与えなくてもケージを噛んだり、お散歩の途中で石をかじったりすることがあります。
十分な散歩や一緒に遊ぶことで、犬にストレスをためないようにしてください。
さいごに
犬の歯は丈夫そうに見えても、硬い物を噛むことで容易に破折することがわかったと思います。
破折から歯髄炎や根尖膿瘍を起こすこともあるので、まず破折させないということが大事です。
犬に与えるデンタルガムやおもちゃの素材、硬さに注意してください。
また、破折を見つけたり疑わしかったりする場合には、すぐに動物病院を受診してください。